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USB-Cで標準化 | AmpiTa Project

 EUでは、EU圏内で販売される情報端末の有線充電にUSBのType-Cの採用方針を公表していましたが、いよいよ期限が決まりました。

 2024年12月28日ということで、2年先だと現在のiPhoneなどもまだ中古流通していそうですが、ボチボチと充電ケーブルがUSB-Cに統一されていくことになります。

The Commission shall, in accordance with Article 10(1) of Regulation (EU) No 1025/2012, and by 28 December 2024, request one or more European standardisation organisations to draft harmonised standards laying down technical specifications for the charging interface(s) and charging communication protocol(s) for radio equipment capable of being recharged by means other than wired charging. In accordance with the procedure laid down in Article 10(2) of Regulation (EU) No 1025/2012, the Commission shall consult the committee set up under Article 45(1) of this Directive. The requirements as to the content of the requested harmonised standards shall be based on an assessment carried out by the Commission of the current state of wireless charging technologies for radio equipment, covering in particular market developments, market penetration, market fragmentation, technological performance, interoperability, energy efficiency and charging performance.欧州委員会は、規則(EU)No 1025/2012 の第 10 条(1)に従い、2024 年 12 月 28 日までに、有線充電以外の方法で充電できる無線機器の充電インターフェース及び充電通信プロトコルに関する技術仕様を定めた整合規格の起草を、1 つ以上の欧州標準化団体に依頼するものとします。規則(EU)No 1025/2012の第10条(2)に規定される手続きに従い、欧州委員会は本指令の第45条(1)に基づき設置された委員会に諮問するものとする。要求された整合規格の内容に関する要件は、無線機器の無接点充電技術の現状について欧州委員会が実施する評価、特に市場発展、市場浸透、市場細分化、技術的性能、相互運用性、エネルギー効率、充電性能を対象とするものに基づかなければならない。

【参考】DIRECTIVE (EU) 2022/2380 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 23 November 2022
amending Directive 2014/53/EU on the harmonisation of the laws of the Member States relating to the making available on the market of radio equipment
(Text with EEA relevance)

【参考】Yahoo!ニュース:新型iPhoneへのUSB-C搭載義務づけ、2024年12月28日以降と決定! EUが正式に発表




6月に議論

 この話題はEU加盟国で議論され、2022年6月には大筋でUSBのType-Cで統一することが決まっていました。

 その前年の2021年9月にはEUが規格統一を義務付ける発表をしており、」iPhoneがどうなるのか行方を見守っていました。

 おそらくロビー活動がなされ、統一するメリット、複数競合するメリットが議論されたと思います。

【参考】日本経済新聞:EU、充電「USB-C」に統一 iPhone対応不可避 設計や供給網に影響(2022年6月9日)

【参考】日本経済新聞:EU、「USB-C」に規格統一 スマホ充電器など24年から(2022年10月5日)




量産効果

 すでに日本では100円均一でUSBケーブルが入手可能なので、これ以上の価格低下は望まないかもしれませんが、規格統一により量産されることで、EU圏以外にも経済的な波及があるかもしれません。

 筆者が使用しているケーブルは500円くらいの物が多いのですが、iPhoneもNintendo SwitchもUSB-Cに統一されれば、所有するケーブルがCタイプだけになるので、もう少し高いケーブルを買っても良いかなと思いますし、おそらく今より高品質な物が安くなるのだと期待を持てます。




災害時のバックアップ

 多くの人が統一規格の製品を使う事で、災害が発生してどこかの工場が供給停止になったとしても、代替手段が確保しやすくなります。

 災害時にUSBケーブルがどれだけ必要になるかわかりませんが、救援物資として1つの規格の品だけ送れば済む、というメリットもあると思います。




非常時のシェア

 近年、災害や停電が起こると避難所や市役所などの電源が確保されている場所では下図のようなスマホ充電が殺到します。

 個々の消費電力は大したことはないのですが、個々がAC-DCの変換とケーブルを持参するので、それに応じられるようにテーブルタップが用意され、空いている口を争奪するという状態になります。

 これがUSBのCタイプで統一されれば、多少はスッキリすると思いますし、市民の理解が得られれば5Vを供給する電源ステーションのようなものもつくりやすくなると思います。

 現状では、充電時間に制限がないので何時間も挿しっぱなしの人が居て、順番待ちの人を困らせています。
 やっと順番が回ってきた人も、次はいつ充電できるかわからないので100%充電まで挿す、これを繰り返すことにより24時間待っても順番が来ない人も発生し得ます。

 500人収容の避難所に50本のUSB-Cケーブル充電器があれば1割の人が充電可能、30分交代で順次充電すれば5時間後に500人が1度は充電できます。
 発災当初の連絡を済ませ、避難所から次への移動をどうするか考えるのが発災6時間後あたり、1度は充電できているのでLINEなどは使える状態かなと思います。

 このサイクルであれば24時間の間に4回、30分間の充電ができるのでトータル2時間、発災初日の充電としては十分ではないかと思います。




USB家電普及の契機

 USBのType-CはPD(Power Delivery)という給電力を強化した規格があります。

 20V・5Aであれば、100VA≒100Wの電力供給が可能です。

 放送やライブなどで使われるマイクのファンタム電源は48Vが多いですが、USBのType-Cでは48V・5Aという大容量も対応可能なので、情報端末の世界から音響や映像へと拡張性があると考えられます。48V×5A=240VA、240W相当です。
 この音響・映像の分野では屋外での撮影やライブなどがあるので電源は常に課題として存在しています。かつては『テープ交換』という作業があったものがデジタル化によってその頻度が少なくなり、残るは『バッテリ交換』という作業だけかもしれません。

 100W以上の給電が可能であれば、多くの家電品が動くことになります。

 シャープの60インチのテレビは消費電力が218Wだそうです。43インチで138Wです。
 240W相当の電力供給ができるタイプのUSB Type-Cであれば60インチのテレビも動かすことができるかもしれません。わざわざ交流100Vを直流に変換してテレビを動作させていますが、そのAC-DCコンバータが不要になれば、もしかするとテレビはお安くなるかもしれません。

【参考】SHARP:4T-C60DN1


 直流家電の普及は、日本では大きな影響が期待されます。

 国内で電圧は100Vで統一されていても、周波数は50Hzと60Hzで分かれています。

 海外では200Vが主流なので、わざわざ『日本仕様』として家電がリリースされるため、200Vの仕様より高くなっている家電品もあります。

 これがUSBのType-Cで動作する家電が普及することで、どの家電メーカーもワールドワイドに商売ができるようになり、良い製品が、より早く、適正な価格で入手できることになります。




医療機器への期待

 筆者は医療従事者でもあるので、医療機器への応用を期待しています。

 まずは在宅医療の現場で使われる医療機器がUSBで動くようになると、停電時も困りませんし、おそらく出掛けるためのハードルが下がると思います。

 モバイルバッテリと自動車内の給電である程度がカバーできれば、気軽に買い物やカフェなどに出掛けられる患者が増えるかなと思います。

 院内で使用する機器も、AC-DCコンバータが不要となることで機器サイズは小さくなり、電源の供給方法がかなり簡素化されると思います。
 特にベッド周辺機器はコンセントの位置によって配置が制限されたり、CTなどで移動する際に電源に困ったりしていますが、それが解消されることが期待できます。

 何よりも欧米から輸入されている医療機器が多い日本において、わざわざ日本仕様にする手間が省かれることは早期の薬事承認/認証にもつながり、良い医療技術が早く輸入されることにもつながります。
 理想的には国産医療機器が世界をリードすべきですが、1国で1億人ちょっとの人口に比べれば米国は倍、EUは多国で1つの塊になっていますので、先進的なものは輸入品が多くなるのは仕方ないと思います。




iPhoneはどうなるのか?

 日本がよっぽど『ガラパゴス』を強調しない限り、EUの流れに沿う事になると思います。

 USBのType-Cでないと販売ができないのであれば、iPhoneもType-Cに変わっていくことになると思います。

 iPhoneとMacは互換がありますが、Type-CケーブルでiPhoneとWindowsや、MacとAndroidが連携できるのかといったソフトウェア的なところは、これから2年かけて議論されていくことになると思います。

 とりあえず、充電用ケーブルは1種類で良くなることを期待します。